栄養たっぷりのはちみつだから、離乳食として赤ちゃんにも食べさせたい・・
でも、ちょっと待ってください!
ラベルに「一歳未満の子供に与えないでください」と書いてあると思います。
一体なぜ、赤ちゃんに、はちみつを食べさせてはいけないのでしょう?
簡単にいうと、まだ一歳未満の赤ちゃんには、天然物であるはちみつに対して、抵抗力がついて
いないからです。しかし、はちみつには、強い抗菌力があるため、傷むことはありませんし、
雑菌なんていないはずですよね? 一体、何に対する抵抗力なのでしょう?
天然のはちみつは、抗菌能力に優れるため、菌が入っても殺菌されて繁殖できません。
しかし、まれに土壌細菌である「ボツリヌス菌」が混入する場合は、話が別です。
実は、ボツリヌス菌は、生育条件の悪い環境では「芽胞」という殻に閉じこもり、その場を
しのぎます。この芽胞は、100℃の高温にも耐えられるほど強いシェルターなのです。
そして、人間がはちみつを食べて生活環境が良くなると、芽胞から出てくるのです。
ボツリヌス菌は、日本で市販されているはちみつの内、5%に混入していると統計が出ている
ほど、どこにでもいる菌です。しかし、ボツリヌス菌が作る毒素は、細菌兵器にも使われるほど
強力なもので、自然界に存在するものとしては、最強クラスの猛毒です。・・なんて聞くと
ビックリしますよね。
猛毒なのは事実ですが、ボツリヌス菌が毒素を作るのは「無酸素状態、水、栄養、温度3.3℃、
ph4.6以上」という条件がそろった場合のみです。
無情にも、この条件にあった食品中で、ボツリヌス菌が繁殖して毒素を作ってしまうと、それを
食べた人は食中毒を起こしてしまいます。適切な治療を受けなかった場合、その致死率は30%
なのだとか・・。
しかし、はちみつ中のボツリヌス菌は、芽胞に閉じこもっているので、毒素なんて作れません
し、繁殖もできないので安心してください。食べてしまっても、お腹の中が3.3℃の低温のはず
がありませんし、無酸素状態でもない限り毒素なんて作れないのです。
な〜んだ、はちみつの中では、ボツリヌス菌はなにも悪さできないんだ、と一安心ですよね。
じゃあ、なぜ一歳未満の赤ちゃんだけが、はちみつを食べてはいけないのでしょう?
一歳未満の赤ちゃんに、はちみつを与えてはいけない理由は2つあります。
一つ目は、「腸内細菌叢(ちょうないさいきんそう)」が整っていないことです。
腸内細菌叢とは、腸内に存在する善玉菌や悪玉菌など、腸内細菌の集団のことで、この数が
整っていると、ボツリヌス菌は繁殖できないのです。
一歳を過ぎると、腸内細菌叢が整うため、はちみつを食べても平気というわけです。
二つ目は、「腸管」が未発達なことです。
赤ちゃんの腸は、まだ栄養を吸収する穴が未発達のため大きく開いており、ボツリヌス菌を
そのまますっぽり吸い込んでしまうのです。そして、ボツリヌス菌の芽胞が悪影響を及ぼし、
「乳児ボツリヌス症」を発症してしまうのです。
この乳児ボツリヌス症は、ボツリヌス菌が3〜30日の潜伏期間を経た後に発症します。
赤ちゃんの元気が無くなり、眠りがちになったり、便秘になるという症状が現れます。
また、まれに死亡するケースもあるので侮れません。
一歳以上であれば何の問題もありませんが、これら二つの理由から、一歳未満の赤ちゃんには、
はちみつを与えてはいけないのです。