みつばちのメスは、受精卵から生まれて働きバチになりますが、オスは無精卵から生まれると
いう、生物学的にとても不思議な存在です。
オスは、一つの巣に数百〜数千匹おり、働きバチよりも一回り体が大きく、目が大きいのが特徴
です。
そして、普段は、巣の中をウロウロして何も仕事をしません。
雄バチの唯一の仕事といえば、女王バチと交尾をすることだけですが、近親交配を避けるため
に、同じ巣の女王バチとは行いません。
雄バチも、女王バチも外に出て、違う巣の者同士が空中で交尾を行います。
女王蜂は飛ぶスピードが速いので、追いつくのが大変です。
そのスピードに追いつける強いオスだけが子孫を残すことができるのです。
しかし、雄バチは交尾に成功しても、女王バチの体に生殖器を引きちぎられて死んでしまうとい
う悲しい運命が待っています。
そして、女王蜂は、引きちぎったオスの生殖器を体内に取り込んで巣に帰り、産卵を始めます。
一方、交尾に失敗した多くの雄バチは巣に戻りますが、また、何も仕事をしないというただの
厄介者になってしまうため、邪魔にならないように、働きバチの少ない巣板の周辺や端の方に
肩身狭そうに集まっているのです。
食料の多い春から夏は、働きバチからエサを貰えますが、少なくなる夏以降は虐待され、巣を
追い出されて死んでしまうのです。
雄バチを英語で「drone bee」というのですが、“drone”というのは「怠け者」という意味なの
です。
ここで一つ、みつばちの不思議な家系を紹介しましょう。
雄バチが、未受精卵から生まれてくるため、下図の雄バチBには、お父さんや息子が存在しま
せん。女王バチとの交尾に成功すれば、娘だけができます。
ただし、母方の祖父と孫の雄バチは存在するのです。
お父さんがいないのに、お爺ちゃんはいて、息子はいないのに、オスの孫はいるのです。