春になると、ミツバチ達が元気に飛びまわります。
一生懸命に花の蜜を集めて巣箱に戻ってきますが、よく見ると、後ろ足の太ももの部分に、何や
らカラフルなボールのようなものを付けているミツバチがいますよ。
実はこれ、花粉なんです。
ミツバチは、蜜を採ろうと花の中に体を突っ込むと、花粉がたくさん付きます。
それを6本の足で器用にかき集めると、口から出る分泌物を混ぜてダンゴを作り、太ももの花粉
カゴとよばれる部分にくっ付けて持ち帰るのです。
この花粉ダンゴは、ミツバチ(bee)の花粉(pollen)で、ビーポレン(beepollen)とよばれ
るものですが、他にも「ミツバチのパン」や「はちパン」なんてかわいい呼び方もあるのです。
なぜ、ミツバチは花粉を集めてくるのか?
それには2つの理由があります。
一つ目は、重要なタンパク源であることです。
ミツバチの幼虫は、孵化して3日目まではローヤルゼリーを与えられますが、それ以降は、花粉
にはちみつを混ぜたものが与えられます。
一匹の幼虫が成虫になるまでに、約0.1gの花粉が必要になりますが、0.1gといえば、ミツバチ
一匹と同じくらいの重さです。
女王蜂は、最盛期には1日2000個ほどの産卵をし、それは毎日続きますから、それらが孵化して
成虫になるまでには、タンパク源として大量の花粉が必要になるのです。
それで、まわりの環境にもよりますが、ミツバチの一群が集める花粉の量は、年間で20〜30s
にもなるのです。
二つ目の理由は、花粉がローヤルゼリーの原料になることです。
花粉は、幼虫だけではなく成虫も食べます。そして、花粉をたくさん食べた若いミツバチの咽頭
腺は発達して、より多くのローヤルゼリーを分泌します。
ローヤルゼリーに含まれるビタミンなどの豊富な栄養素は、花粉由来のものが多いため、花粉は
ローヤルゼリーの原料となるスーパーフードといえるものです。
よって、花粉が不足するとローヤルゼリーが作れなくなるのです。
孵化後3日目までの幼虫にはローヤルゼリーが与えられるため、無ければ育てることができませ
んし、女王蜂はローヤルゼリーを食餌とするため、無ければ産卵が止まってしまいます。
そのような理由から、蜂群を維持するためにも花粉はとても重要なのです。
花粉(ビーポレン)は健康食品として販売できますし、ストックしておけば、早春や越冬前の
花粉の少ない時期に、ミツバチに与えることができます。
花粉の採集方法としては、巣門に花粉採集器を取り付けておくことです。
花粉採集器には、ミツバチがギリギリ通過できるくらいの穴が開いており、そこを通過するとき
に足に付いている花粉を掻き落として回収できるという道具です。
花粉採集器を取り付けた巣箱は、花粉の貯蔵量が少なくなるため、ミツバチは花粉の採集に重点
を置くようになります。
しかし、それにより採蜜量が減ってしまうため、すべての巣箱に花粉採集器を取り付けるのでは
なく、花粉採集専門の蜂群をいくつか決めて取り付けるといいでしょう。
一群が年間で20〜30sの花粉を採集できると考えると、10sほど回収できればいいのではない
でしょうか。
回収した花粉は、カビを防止するため、天日干しで24時間乾燥させます。
そして、乾燥させた花粉が虫害にあわないようにドライアイスで駆虫作業を行い、乾燥剤と共に
密閉容器に入れて冷蔵庫で保存します。
越冬するには、秋に健勢(ミツバチを増やす)して強群を作り、万全のコンディションで臨まな
ければなりません。しかし、この時期に花粉が不足していれば、健勢が進まないため、花粉を給
餌してやる必要があります。
給餌の方法は、保存しておいた花粉を同量の水に24時間漬けてふやかし、耳たぶの柔らかさに
なるようにはちみつを加えてダンゴを作ります。
ダンゴは乾燥しないようにセロファンをかぶせて、巣脾1枚につき100gを上桟にのせます。
つまり10枚群であれば1sのダンゴが必要ということです。
もし、花粉が足りない場合は、大豆粉を代用して、花粉:大豆粉=1:3の割合で混ぜてダンゴを
作って与えるといいでしょう。
このように、花粉は単なるエサとしてだけでなく、ローヤルゼリーの原料として、蜂群維持とい
う大切な役割を持つものです。
内検で常にチェックして、貯蜜と同じように不足していれば給餌するように心がけましょう。