人工養成した女王蜂や、よそから購入した女王蜂を無王群(女王蜂がいない蜂群)へ誘入する
場合、直接巣箱へ入れてしまうと、働き蜂から攻撃をうけて殺されてしまいます。
これは、女王蜂が出す匂い(フェロモン)の違いによるものと考えられ、異物が侵入してきたと
判断されて排除されるのです。
そこで、女王蜂を無事に無王群に誘入させるための方法を見てみましょう。
女王蜂を誘入する場合、必ず誘入先は無王群でなければなりません。
それは、みつばちの巣に女王蜂は一匹だけという決まりがあるため、よそから女王蜂を入れてし
まうと、働き蜂に襲われて死んでしまうからです。
それで、産卵力の低い女王や、オス卵ばかりを産卵する未交尾女王、生殖に異常がある女王を
優秀な女王と交換する場合は、必ずこれらの欠陥女王を取り除き、無王状態にして誘入しなけれ
ばならないのです。
また、女王蜂が見当たらず無王群だと思っても、実は働き蜂の中に紛れ込んでいたということは
よくあります。特に交尾前の女王蜂は、交尾飛行にそなえて体が小さくなり、働き蜂と同じくら
いの大きさになるため見極めが難しいのです。
それで、確実に女王蜂(未交尾王)がいないかを確認しなければなりません。
確認の方法としては、他群から無蓋蜂児枠を入れてみることです。
もし、本当に無王群であれば、すぐに変成王台が作られるはずですし、作られなければ未交尾王
がいるということです。
誘入する女王蜂は、@出房直後の若い働き蜂3〜4匹をお供にして王籠に入れます。
そして、Aエサとなる練糖を詰めて、B巣箱中央部の巣脾と巣脾の間に設置します。
@の王籠に共に入れる働き蜂は、日令が経ったものだと女王蜂に襲いかかる危険がありますが、
出房したばかりの若蜂は危害を加えません。
これは、日令が経った働き蜂は、旧女王蜂のフェロモンに支配されているため、誘入する女王蜂
が出すフェロモンの違いにより、敵とみなして襲いかかるからです。
しかし、出房したての若蜂であれば、旧女王蜂のフェロモンに支配されていないので、誘入する
女王蜂をすんなりと受け入れるというわけです。
Aの練糖は、砂糖:はちみつ=5:1の割合で混ぜて団子にしたものです。耳たぶくらいの硬さに
なるように作ります。
Bの巣箱の中央部に王籠を設置するのは、女王蜂のエサとなるローヤルゼリーを出す若蜂がたく
さん集まっているためです。
王籠を設置するタイミングは、旧女王蜂を取り除いてできるだけ早い方がいいでしょう。
それは、無王群の環境を作ったとはいえ、無王状態が長時間続けば、働き蜂は変成王台を作るこ
とに集中してしまうからです。
王籠を設置した直後は、働き蜂が敵意丸出しで「よそ者が入ってきた!」といわんばかりに王籠
に噛みついてきます。
働き蜂は手で払ってもなかなか離れないほど興奮していますが、設置してから丸3日もすれば
馴染み、ローヤルゼリーを口移しで王籠の女王蜂に与えるのが見られます。
この丸3日の間に、王籠の女王蜂が出すフェロモンが全郡に行きわたり、働き蜂を支配できたと
いうわけです。
試しに、王籠に集まっている働き蜂に息を吹きかけてみると、簡単に離れていきます。
こうなれば、女王蜂が蜂群に馴染んだ証拠ですが、まだまだ油断はできません。
馴染んだとはいえ、まだ女王蜂としての地位は不安定で、すぐに王籠から出してしまうのは危険
だからです。
そこで、再度、王籠に練糖を詰めて巣箱に入れます。
すると、王籠の内と外から働き蜂がトンネルを掘るように練糖を食べ始め、穴が開通するころに
は、女王蜂はさらに蜂群に馴染んでいるはずです。
しかし、女王蜂を誘入した直後の蜂群は神経過敏になっているため、ちょっとした刺激も与えて
はなりません。
したがって、練糖を詰替えて4〜5日間は、巣箱のフタを開けないように注意しましょう。
その後、女王蜂の無事が確認できたら、全ての巣脾を調べて王台があれば潰し、女王蜂誘入の
完了です。
もし、誘入に失敗してしまった場合は、女王蜂を救出しなければなりません。
女王蜂に襲いかかっている働き蜂を、手やピンセットなどで引き離そうとしてもなかなか離れよ
うとせず、無理をすると女王蜂の体が傷付きかねません。
この場合は、小麦粉を振り掛けて、嫌がった働き蜂が女王蜂から離れたすきに救出します。
また、巣脾ごと水の中に入れて、働き蜂が溺れまいとして女王蜂から離れたすきに救出する方法
もあります。
再三、誘入に失敗する場合は、その蜂群に未交尾王がいるかもしれないので、よく調べる必要が
あります。未交尾王もいないのに誘入に失敗するようであれば、合同するより仕方ありません。
流蜜期であれば心配ありませんが、特に枯渇期などに盗蜂が巣箱に入るとそれが刺激になり、
興奮した働き蜂が女王蜂を殺しかねません。
王籠を入れて1週間は、巣門を狭めて対応し、全蜂群への給餌も差し控えるようにしましょう。
気が付いたら無王状態になっていた・・
ということもあるでしょう。
無王状態が長い蜂群ほど変成王台を作るのに夢中になってしまい、女王蜂の誘入は難しくなりま
す。したがって、他群と合同するのが得策です。
しかし、どうしても誘入したければ、全ての王台を除去して、強く燻煙した上で王籠をいれなけ
ればなりません。
また、働蜂産卵を起こしている蜂群への誘入は不可能です。
これは、産卵を始めた働き蜂が、自分が女王蜂だという意識を持つためで、そこによそから女王
蜂を持って来ても、働き蜂から襲われて殺されてしまうからです。
よって、働蜂産卵を起こしてしまった蜂群は、女王蜂の誘入もダメ、合同もダメということにな
り、滅びるしか道がないため決して起こしてはならないのです。
ちなみに、未交尾女王の誘入は大変難しく、無王群にほとんど馴染まないため、止めた方が賢明
です。しかし、面白いことに、王台から出房した直後の未交尾女王であれば、王籠を使って馴染
ませなくても無王群はあっさり受け入れます。
そういった理由から、計画的に女王蜂を交換したり群殖するのであれば、出房間際の成熟王台を
無王群に与えるのが一番簡単です。
成熟王台は、中にいる女王蜂を傷つけないように根元から切り取り、ミツロウかピンで無王群の
巣脾に張り付けて与えます。
しかし、突発的に女王蜂がいなくなったときに、都合よく出房したての女王蜂がいるなんてこと
はそうそうないでしょう。
そうした場合には、自前で養成したり、よそから購入した女王蜂を、上記の方法で誘入しなけれ
ばならないのです。