女王蜂の人工養成がマスターできれば、優秀な女王蜂を思い通りに増やすことができます。
優秀な女王蜂を育てるには、優秀な蜂群から幼虫を得なければなりません。(この蜂群を種母群
といいます)
何をもって優秀と判断するか?
それは、集密力と性格の穏やかさです。
集蜜力が高ければ分蜂性が低いと判断できますし、女王の産卵力も高いと判断できます。
さらに産卵力が高ければ強群を作る能力があり、越冬力も高いと判断できます。
その上、性格が穏やかであればいうことありませんよね。
このような性質は遺伝するため、集蜜力が高く性格が穏やかな蜂群を種母群に選ぶのです。
女王蜂になる幼虫も、働きバチになる幼虫も同じ幼虫です。
同じ幼虫なら、どんな要因が女王蜂と働きバチに分けるのか?
それは、ローヤルゼリーです。
働きバチになる幼虫は、孵化して3日目まではローヤルゼリーを与えられますが、それ以降は、
はちみつや花粉がエサになります。
一方、女王蜂のエサは、一生ローヤルゼリーです。
この違いで、女王蜂になるか働きバチになるかが決まってしまうのです。
よって、女王蜂の幼虫は、孵化して3日以内のものを選ばなくてはなりません。
さらにいうと、幼虫は日齢の若いものほど優秀な女王蜂になります。
優秀な女王蜂は体重200rを超える体格を持つもので、これは日齢2日以内の幼虫が王台に移虫
されなければなりません。2日を超えて3日目の幼虫でも女王蜂になれますが、体格が小さく貧弱
な女王蜂になってしまうのです。
これは、王台にいる幼虫は、将来女王蜂になるものと決まっているため、はじめから与えられる
ローヤルゼリーの量がほかの幼虫よりも多いと考えられるからです。
よって、王台に移虫する幼虫は、若ければ若いほどいいのです。
では、どうやって日齢が2日以内の幼虫と判断するのか?
それは、空巣脾を一枚用意し、女王蜂をこれにとまらせて巣箱の一番端に差し込みます。
その隣に垂直隔王板を入れて仕切り、女王蜂を隔離します。
すると、女王蜂は隔離されているため、この巣脾にだけ産卵します。
産卵後24時間経ったら垂直隔王板を抜き、その場所にこの巣脾を差し込み、一番端には空巣脾を
差し込みます。
卵は48時間で孵化し、さらに24時間経つと移虫に適した幼虫になるというわけです。
女王蜂の養成の最適期は、流蜜期(5月〜7月)です。
それまでに一つの蜂群を強盛群に育て、女王蜂の養成群に仕立て上げましょう。
必要な道具は、移虫枠、人工王椀、移虫針、そして水で10倍希釈したローヤルゼリーです。
ローヤルゼリーは、内検時に変成王台をみつけて潰せば中に入っているので、あらかじめ遮光
ビンに採取しておきます。
移虫をする前日に、養成群の巣箱から女王蜂を取り除き、無王群にします。
無王群にすることで、働きバチの王台への欲求を高めるためです。
そして、その巣箱に人工王椀を30個付けた移虫枠を差し込みます。(養成群の匂いをつけて馴染
ませるため、また働きバチに王椀の掃除をさせるため)
移虫当日、養成群の巣枠に変成王台があればすべて潰します。
そして、それ以降、変成王台を作らせないように無蓋蜂児枠をすべて取り除き、貯蜜枠と差し替
えます。もし、貯蜜枠がなければ空巣枠を入れて、流蜜期であっても給餌(砂糖:水=1:2)
します。給餌することで移虫の成功率が上がるといわれているからです。
あらかじめ採取しておいたローヤルゼリーを、水で10倍希釈します。
そして、養成群の巣箱に入れておいた移虫枠を取り出し、移虫針を使ってこのローヤルゼリーを
人工王椀の底に塗ります。
これをすることにより、幼虫を人口王椀に簡単に付着させることができます。また、移虫作業中
に栄養が途切れることもなく、乾燥防止にも役立ちます。
次に、移虫針を使い、種母群の巣房から若い幼虫を人工王椀に移虫します。
移虫する際は、種母群の巣脾から蜜が流れてくるので、それを受けるバットを用意します。
バットの上に種母群の巣脾を置き、その上に移虫枠を重ねて移虫します。
幼虫は、くるんとCのように丸まっているので、背中側にちょいと移虫針をつける感じですく
うとうまくできます。
移虫は10分以内を目標に完了させましょう。
移虫ができたら、これを養成群に戻して移虫作業の完了です。
移虫作業の翌日に人工王椀にローヤルゼリーが蓄えてあるか、また王台化されているかを確認
します。移虫した人口王台は、4日後には封蓋され、11〜12日後に女王蜂が出房してきます。
それまでに、目的となる女王蜂の数だけ交尾群を用意します。
移虫から10日後に人工王台を取り外し、1つずつ交尾群の蜜枠へミツロウかピンで落ちないよう
に止めておきます。このとき、小さい王台や傷ついた王台はあきらめて捨てましょう。
翌日か翌々日には、女王蜂が誕生しているはずです。
交尾群の養成から女王蜂の導入と群殖までは「女王蜂の自然養成法」と同じですので、下記の
リンク先を参照して下さい。
コチラ→ 女王蜂の自然養成法