待ちに待った採蜜シーズンがやって来ると、楽しみなのが、はちみつの回収です。
ミツバチ達が一生懸命頑張って作ったはちみつを、おすそ分けしてもらうのですが、どのタイ
ミングではちみつ入りの巣脾を回収すればよいのでしょうか?
また、採蜜をするにあたって、どのような注意点があるのかを見てみましょう。
だんだんと巣に蜜が貯まりだすと、見ているだけでワクワクするでしょう。
しかし、だからといってすぐに回収はできません。
なぜなら、今見えている蜜は花の蜜で、完熟したはちみつではないからです。
完熟しないうちに回収したはちみつは、まだ水分含有量が多く、糖度も80%に満たない不完熟
なはちみつのため、夏に発酵してしまう恐れがあります。
では、何をヒントに、完熟したはちみつになったかを判断すれば良いでしょう?
それは「みつぶた」です。みつぶたとは、ミツバチのお腹の分泌腺から出るミツロウでかけら
れたフタのことで、これが完熟しましたよというサインになります。
はちみつは、そのままにしておくと吸湿する性質があるので、フタをする必要があるのです。
はちみつの容器のラベルにも「蓋をしっかり閉めてください」と表示してますよね。
みつぶたは、貯蜜巣脾の上部から下に順番にかけられていきますが、巣脾全体にみつぶたがかけ
られてから回収するといいでしょう。
また、ここで気を付けたいのが、分蜂熱です。
巣脾にみつぶたがかけられて、他に空いた巣脾がなくなると、ミツバチが分蜂熱を起こすキッ
カケになりますので、適宜に空の巣脾を与えて、常にミツバチが仕事ができる環境を整えてやる
ことが大切なのです。
分蜂熱について詳しくはコチラ→ 分蜂が起こるキッカケと防止法
はちみつがたっぷり貯まった巣脾に、みつぶたがかけられたらいよいよ採蜜・・といきたいと
ころですが、ちょっと待ってください。
シーズン1回目のはちみつは、回収しない方がいいです。
理由は、1回目のはちみつを奪われるとミツバチのやる気が下がってしまい、2回目、3回目と
回を追うごとに、はちみつの回収量がだんだん減っていくのです。
ミツバチにとって、はちみつ作りはとても負担のかかる重労働ですから、はちみつを回収すると
ストレスや疲労でものすごく機嫌が悪くなります。
まだまだ、2回目、3回目と採蜜は続きますから、後のことを考えて1回目は残しておいた方が
いいのです。
また、1回目のはちみつは、巣脾に残った去年のはちみつと混ざることもあり、色が濁ったり
香りが落ちるという理由もあるため、回収しない方がいいのです。
よって1回目のはちみつは、ミツバチの食料が不足する夏の枯渇期のために、とっておくと良い
でしょう。
はちみつの回収は、朝の7時までに終わらせるのがベストです。
それは、陽が高くなるとミツバチが本格的に仕事をし始めますが、そんな最中に巣箱を荒らされ
ると、とたんに機嫌が悪くなり、いつもより採ってくる蜜の量が減ったり、全く蜜を採ってこな
いこともあるからです。
はちみつを回収するには、はちみつの入った巣脾(貯蜜巣脾)を巣箱から抜かなければなりま
せん。巣箱のふたを開けて、ミツバチに燻煙器で煙をかけて大人しくさせた後、貯蜜巣脾を抜き
出して付いているミツバチを蜂ブラシで優しく払い落とすのです。
これが一般的なやり方ですが、実はもっと簡単で効率のいい方法があるのです。
それは、石炭酸(フェノール)を使うことです。
まず、石炭酸を50%に希釈します。そして、それを布に浸して絞ります。
継箱のふたを取って、石炭酸の付いた布を上からかぶせてやると、ミツバチがこれを嫌い、短時
間のうちに巣箱の一段目(育児室)に逃げ込むのです。
それで、ミツバチを振り落すことなく、継箱ごと回収することができるのです。
継箱を回収したら、布を取ってフタをしてやります。
はちみつの回収には遠心分離機を使いますが、回収作業中に匂いに誘われてミツバチが寄って
くるため、大きな蚊帳を用意するといいでしょう。
回収した継箱から貯蜜巣脾を取り出すと、みつぶたがかけられているので、これを切り取るため
に、お湯と蜜刀を2本用意します。
2本用意するのは、蜜刀は温めて使うため、1本ずつ交互に温めながら使うと効率良く作業ができ
るからです。
そして、みつぶたを切り取った貯蜜巣脾を遠心分離器にかければ、はちみつが回収できます。
分離器は、強く回すと巣脾を壊してしまいます。ゆっくり回しても十分はちみつを分離できます
ので、焦らずに丁寧に行いましょう。
また、ミツバチの巣箱は、育児に適した約35℃に保たれているため温かく、はちみつの粘性も下
がります。あまりグズグズしていると冷めてしまい、はちみつの粘度が高まると分離しにくくな
るので、素早く分離器にかけて回収しましょう。
空になった貯蜜巣脾は継箱に戻して、継箱はもとの巣箱に重ねて回収作業は終了です。
はちみつの匂いは、特に流蜜期以外で盗蜂を誘発してしまうため、回収作業は素早く行い、また
回収する場所も蜂場から少し離れたところでやるといいでしょう。