ミツバチの健康状態や巣の様子を検査することを「内検」といいますが、これは春から秋に
かけては、最低でも一週間に一回は行いたいものです。(冬場は巣箱内の温度が下がってしま
い、ミツバチが凍えるのでやらない)でも、一体何をどう見ればよいのかと思われるでしょう。
それでは、ここで内検の手順と観察すべきポイントを解説しましょう。
内検は、晴れて風のない日の午前中に行います。
風の強い日や天気の悪い日は、ミツバチ達はご機嫌ナナメなので、避けた方がよいでしょう。
また、午前中に内検を行うのは、怒りっぽい老蜂が、外に蜜を採りに出ている時間が長いから
です。働きバチの仕事は分業制で、若い蜂は巣の中で働いているのに対し、外に花蜜を採りに
行くのは、年を取った老蜂です。老蜂は若蜂に比べて怒りっぽいので、なるべく老蜂が外に出て
いる時間が長い午前中を狙って内検を行いたいのです。
また、内検の最中は決して巣門の前に立ってはダメです。
外から帰ってきた働きバチの進路を塞ぐことになり、巣に入れなくなると機嫌が悪くなって
襲ってきます。内検は、巣箱の横か後ろに立って行いましょう。
まず、内検には長袖、長ズボンに手袋をして覆面布をかぶって臨みます。
持って行く道具は、燻煙器とハイブツールです。
燻煙器は、ミツバチに煙を吹きかけておとなしくさせる道具です。
ハイブツールは、三味線のバチのような形の金属でできたヘラで、巣枠と巣箱がプロポリス
(ヤニ)でくっ付けられた場合にこれで引き離したり、ミツバチが作ったムダ巣をこそぎ落と
したり、色々使える便利な必須アイテムです。
まず、内検をする前に、「これから内検をしますよ〜」ということで、巣箱を”コンコン”と
ノックしてミツバチに知らせます。冗談っぽいけど本当にやります。
そして、巣箱のフタと内側にかぶせてある布を静かに取って、燻煙器で2〜3回煙を吹きかけ
ます。ここで注意しなければならないのは、煙は白くて熱くないものを吹きかけることです。
煙に火を含んでいるものや、黒くて熱いものを吹きかけると、ミツバチが傷ついたり死んで
しまいます。不思議なことに、煙を吹きかけられたミツバチは、おとなしくなります。
一説によると山火事と勘違いしたミツバチが、大事なはちみつを守るために吸い込んで、お腹
がいっぱいになるからおとなしくなるのだとか・・ホントでしょうか?
ミツバチの不思議な生態の一つです。
ミツバチがおとなしくなったら、他の巣脾や巣箱にぶつけないように、目的の巣脾をゆっくり
丁寧に引き抜きます。巣脾を引き抜くのは、一度に一枚ずつというのが原則です。
もし、これを乱暴に扱うと、ミツバチが怒って攻撃してきますから気を付けてください。
普通、一段目の巣箱に入っている巣脾の一番外側の@は、貯蜜巣脾になっています。
貯蜜巣脾とは、はちみつを貯めている巣脾です。Aには、貯蜜と他の巣脾と比べて花粉が多く
蓄えられています。@、A以外の巣脾は、広い範囲で蜂児圏(卵や幼虫)で、女王蜂もここに
います。
巣脾は、まっすぐ目の高さまで上げて観察します。表面を見たらひっくり返して裏面も見ます。
巣脾を横に倒すと、蜜が垂れてくるので注意してください。
それでは、内検で確認するポイントを見てみましょう!
@ 女王蜂と産卵の確認
女王蜂がちゃんと存在していて元気かどうか、また、ちゃんと卵を産んでいるかを確認します。
女王蜂がいなければ、すぐに新しい女王蜂を養成しなければなりませんし、元気がなかったり
卵を産んでいなければ、交換しなければなりません。
※女王蜂の養成法と交換については別項で。
A 貯蜜の確認
ミツバチの食料になるはちみつがあるかどうかを確認します。
一番外側の巣脾を調べて、もし無ければ貯蜜巣脾を与えます。貯蜜巣脾が無ければ、給餌器に
糖蜜(砂糖:水=1:1)を入れて与えます。
B 花粉の確認
花粉もミツバチの大切な食料です。特に花粉は、若い働きバチの咽頭腺から分泌されるローヤ
ルゼリーの原料になり、そのローヤルゼリーは女王蜂の食料ですから、花粉が無ければ産卵が
ストップしてしまいます。外側から2番目の巣脾を確認して、花粉が足りなければ補給します。
C 王台の有無の確認
特に流蜜期になると、働きバチが分蜂王台を複数作ることがあります。
分蜂させる予定が無ければ、王台を見つけ次第、完全に潰してください。もし潰さなければ、
新女王蜂が育つと分蜂されてしまいます。
D ミツバチにダニがいないか?
ミツバチに寄生するミツバチヘギイタダニがいないかを確認します。
ミツバチにくっ付いていて、丸くて赤茶色の肉眼でも見えるダニです。見つけ次第駆除しなけ
ればなりません。
E 巣箱の底にゴミがたまっていないか?
ミツバチはきれい好きなので、自分たちで掃除をして巣内をきれいにしていますが、弱群では
掃除まで手が回らずに、巣箱の底にゴミがたまっていることもあります。代わりにきれいにして
あげましょう。
以上が主なチェックポイントになります。
慣れない内は時間がかかりますが、できるだけ早くチェックして巣脾を巣箱に戻すように心が
けましょう。あまりグズグズしていると、特に流蜜期以外では盗蜂を誘発する恐れがあります。
内検は、素早く、優しく、慎重にを心懸けて、ミツバチ達とより良い関係を築いていけるよう
にしましょう!