女王蜂の養成法には、自然養成と人工養成がありますが、今回は自然養成で優秀な女王蜂を得る
方法を勉強しましょう。
女王蜂は「王台」で育てられますが、王台にも、@分蜂王台、A換王王台、B変成王台の三つ
があります。この中で、女王蜂養成に一番適しているのは、@の分蜂王台です。
それは、分蜂王台が作られるのは5〜7月の流蜜期で、この時期は貯蜜、花粉ともに豊富にあり
ますし、咽頭腺が発達した若いミツバチも沢山いるため条件が良いのです。
蜜や花粉はミツバチのエサになりますが、特に花粉は、女王蜂のエサであるローヤルゼリーの
材料になるため重要です。若いミツバチが花粉を食べて、その発達した咽頭腺からローヤルゼ
リーを分泌して、王台の中にいる女王蜂の幼虫に与えて育てるのです。
また、王台を作るにはミツロウが必要ですが、ミツロウの材料は花蜜のため、流蜜期が女王養成
に一番適した時期なのです。
しかし、分蜂王台を利用するといっても、分蜂熱をおこされるとミツバチは仕事をしなくなり、
はちみつが採れなくなってしまいます。
そこで、養蜂場で飼っている全蜂群のうち最も優秀だと思われる(採蜜量が多い)蜂群を選び、
これに分蜂させて残りの蜂群は採蜜に集中させます。
優秀な蜂群は、採蜜量が多い=分蜂熱を起こしにくいですが、流蜜期に巣門を狭めたり、巣脾を
減らしてミツバチを密集させることで分蜂熱をおこします。
まず、第一回目の分蜂がでたら、女王蜂を見つけて回収します。
その女王蜂を新しく用意した巣箱の前に置けば、働きばちがその巣箱に入っていくでしょう。
自然分蜂のため、巣箱を新しい位置に設置しても定着し、もとの場所に戻ろうとはしません。
一回目の分蜂では、女王蜂の羽を剪翅(せんし 羽を片方切ること)しておけば、飛んで逃げら
れないため、すぐに見つけて回収できます。
そして、第一分蜂が出たあとは、巣脾に複数の王台がつくられているため、ここから新女王が
次々に生まれてきます。
しかし、次々に生まれても、剪翅していない女王蜂に仲間半分を引き連れて行かれると、回収
が大変です。遠くに飛んで行かれたら、それこそ回収不可能になってしまいます。
そこで、目的となる女王蜂の数だけ交尾箱を用意します。
交尾箱1つにつき、交尾箱用に作った蜜枠2枚と液糖を入れた給餌箱を1つ、そして、巣脾に止ま
らせた働きばちを約250匹入れて交尾群をつくります。
その交尾群の巣脾に、根元からきれいに切り取った王台をミツロウかピンでとめるのです。
交尾箱は日の当たらない場所に巣門を閉じたまま一昼夜おき、翌日開放します。
また、交尾箱は盗蜂を受けやすいため蜂場やその近辺に設置することは避けます。
女王蜂は交尾箱で出房し交尾飛行へ出ると、その一週間後には産卵が見られるはずです。
産卵が確認された女王蜂は、利用するまで交尾箱で飼育します。
流蜜末期(7月終わり頃)に採蜜群として活躍していた蜂群の女王蜂を排除し、二分割します。
一つの蜂群を二分割した場合、もとの巣の位置から左右に50センチずつ離して巣箱を設置して、
もとの場所には何も置かないようにします。
そして、無王状態になった2つの蜂群に、作っておいた女王蜂を誘入して群殖の完了です。
誘入した女王蜂は、採蜜成績のよい系統の優秀な女王蜂なので、これから生まれる働きばちは、
その遺伝を受け継ぐ優秀な蜂群になるというわけです。